それに気が付いた良が、シンクに残っていた嘔吐物を水で流した。


俺は手際よく目玉焼きを焼く彗の後ろ姿をジッと見つめていた。


部屋の中には卵の焼ける音と、食欲をそそる香りが立ち込める。


「なんだかお腹がすいてくるね」


百合が少しだけ笑顔を浮かべ、そう言った。


「そうだな。ここに来てから1時間くらいは経っているからな」


携帯電話で時間を確認して、俺は言った。


そして数分後「できたよ」と、彗が皿に目玉焼きを乗せてテーブルに置いた。


箸はないから、代わりに戸棚からスプーンを取り出す。


「うわ、うまそう」


テーブルの横から良がそう言う。


ついさっき吐いたくせに、食欲旺盛なヤツだな。


俺は呆れながら良を見た。


「悠君、どうぞ」