どんどん近づく足音。


相手は警備員なのか、その足音は生徒用のスリッパではなく皮靴の音だ。


「走れ良!」


もたもたとついてくる良に苛立ちを覚える。


もっと機敏な動きができにのかよ、デブが!


心の中で罵声を飛ばしながら、女子トイレのドアに手をかけた。


足音がすぐそばで聞こえる。


ドアを開けて中に入ると、俺はそのまま車いす用の広いトイレに駆け込んだ。


良がそれに続いて駆け込む。


俺はすぐにドアの鍵をしめた。


ゼェゼェと呼吸を繰り返す良に「うるさい!」と小声で怒鳴ると、良は両手で自分の口をふさいだ。


足音が階段を登り切り、教室のある方へと移動していく。