俺はグッと奥歯を噛みしめながら、教室を出た。


向かって右手の階段から下りると職員室の前を通る事になる。


俺は迷わず、左の階段へと向かった。


廊下はシンとしていて、俺たちの足音しか聞こえなかった。


しかし。


「何か聞こえる」


良がそう言い立ち止まったのだ。


「あぁ? なにがだよ」


どうせ風の音かなにかだろ。


そう思ったのだが、それが人の足音であることにすぐに気がついた。


足音は階段を上って来ていて、徐々に近づいてくる。


冷や汗が背中に流れるのがわかった。


ドクドクと心臓が高鳴る。


咄嗟に、俺は廊下の左手にある女子トイレへと走っていた。