誰かに見つかれば、終わりだ。


俺はゴクリと唾を飲み込み廊下を見た。


今は誰もいない。


「良、足を持て」


「う、うん」


青い顔をしているが、もう後戻りはできないと感じたのだろう。


良は素直に従った。


俺は月奈の肩を持ち上げた。


小さな月奈は想像以上に軽くて、これなら1人でも簡単に運べたかもしれないと思う。


こんなに軽くて小さな女にあれだけの勇気が備わっているなんて、考えられない。


俺にかかればひとひねりだと、月奈自身も理解していたハズだ。


だけど、違うんだ。


力じゃないんだ。


いくらねじふせたって、ねじふせることが出来ないものもある。


それが、月奈の強い心だったんだ。