さっきまで荒い呼吸を繰り返していた月奈は、もう呼吸をしていなかった。


唇は青く、目はどこも見てはいない。


「うそだ……」


「うそじゃない。月奈は死んだ。死体を移動させなきゃいけない」


「移動させる?」


「このままじゃ俺もお前もムショ行きだ」


そう言うと、良は焦ったように視線を泳がせた。


臆病な良のことだ、刑務所なんかに入るなんて絶対に嫌だろう。


「で……も……」


「お前、ここで人生終わっていいのか?」


「それは……」


良の気持ちはやじろべぇのように揺らいでいる。


俺が指先ひとつでその感情を変えることは簡単だった。


「月奈は死んでいない。行方不明になっただけだ。俺たちは今日2人でここでダベッてただけだ。いいな?」


脅すようにそう言うと、良は震えながらうなずいたのだった……。