月奈はすぐに上着の前を止めてドアへと走った。


あぁ、もうちくしょう!


「くそ! 逃がすかよ!」


月奈より先にドアの前に立ちはだかる俺。


「どけてよ」


月奈は俺を真っ直ぐに見詰めてそう言った。


この女。


こんな状況でもひるまねぇのかよ。


その強さにギリッと奥歯を噛みしめる。


どうせなら泣き叫べばいいんだ。


お願いだから帰してと、俺に向かって懇願すればいいんだ。


そんな女なら、きっと口封じも簡単にできた。


それなのに……こいつはそうはいかなかったんだ。


「高嶋、もうやめよう」


「黙れ!!」


俺は良に向かって怒鳴り付けた。