他は壁と同じように真っ白で、目を凝らして見ないと境目がわからない。


「入ってみようぜ」


春姫の後ろから嵐が言う。


ノブに手を伸ばしかけた手を止めて春姫が振り返った。


「この建物、入っても大丈夫だよね?」


「あぁ? 大丈夫だろ?」


雨に濡れ疲れてイライラしている嵐が眉間にシワを寄せて返事をした。


「開けた途端警備会社に通報されるとか、ないよね?」


嵐の言葉を無視し、春姫が言葉を続ける。


「あぁ、それなら大丈夫だと思うよ」


そう言ったのは悠だった。


悠はここまで歩いて来た事で荒い呼吸を繰り返している。