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どうにか嵐の太ももから肉を切り取った百合は、顔まで血まみれの状態だった。


隣にいた俺にも血が飛び散り、鉄の匂いが鼻孔を刺激している。


百合は肩で呼吸を繰り返し、手から包丁を落とした。


カチャンッと音がしてフローリングに落ちる包丁。


「ねぇ、あたし思ったんだけど……」


百合が嵐を見下ろして呟くように言った。


「なに?」


「ケチャップが用意されていないのって、こういうことなんじゃないかな?」


そう言い、嵐の血を指さす。


それは少し暗い赤色をしていて、ケチャップの色合いとよく似ている。


百合は俺の返事を聞くより早く、嵐の腹部に巻いていたクッションを外した。


持ち上げるとクッションからは血がしたたり落ちていく。


「新しいクッションで止血してあげて」


「あ、あぁ」


百合にそう言われ、俺は慌ててソファへ走る。


ソファには青い顔をしたまま動かない彗がいた。