『そうだ紗希、これ』






先輩はそう言うとA4サイズのチラシを私に差し出してきた。




そのチラシには“市民絵画コンクール”と書いてあり、私はその文字を見た後に先輩を見つめる。








『8月の終わりに、展覧会があるんだ。

 俺もこれに応募した作品があるから、紗希に見に来てほしいんだ』








『先輩も応募したんですか?

 どんな絵を応募したんですか?』





興味津津といった顔で先輩に問いかけるも、先輩は“内緒”と言って答えてはくれなかった。





でも、先輩の絵、楽しみだな……



きっと素敵な絵を描いてるんだろうな……










『あ、先輩も一緒に見に行きましょう?』





『わりぃ。俺、一応受験生なもんで。

 夏休みは夏期講習に行くんだ。

 だから一緒には行けない』






あっさりとお誘いを断れてしまって、少しズキッと胸が痛んだけども、成田先輩も三年生、受験があるもんね……





これからの将来を考えていく、大事な時期だもん。




仕方ないよね……










『紗希、寂しい?』




先輩は意地悪っ子の笑みで聞いてくる。





そりゃぁ……寂しいですよ……





でも、受験生の先輩には本音を言って困らせたくないからな……









『……寂しくないですよ』




と、強がりを先輩に返す。







先輩は“素直じゃないねー”とか言ってクスクス笑っていたけど。





私は先輩のことを大切にするって紗季さんと約束もしてるもん。








だから、例え見え見えな強がりでも言うんだ。