『………紗希………紗希………』





私がどんなに必死に先輩に気付いてもらおうとしても、先輩は悲痛の声でもう一人の私を抱きしめているだけで……







……もう一人の私……?






“もう一人の私”の言葉に私は嫌な予感がした。















『……紗希……紗希………頼むよ……。

 目を覚まして……俺を見てよ……俺に好きって言ってよ………紗希………』







私は先輩の言葉を耳にするー……








先輩、私、ここにいるよ……




先輩のすぐ傍で先輩を見てるよ……








『………先輩……好きだよ………?』







ねぇ、先輩ー…



私、ここであなたの言うとおりに“好き”って言ってるよ………













『………紗希ーーーーーーーーーーーー!!』






私の名前を呼ぶ、その先輩の顔は見たこともないくらいに歪んでいて、そしてその目から溢れる涙ー……