『………山科先輩………ありがとうございます……』
私は自分の力でソファーから腰を上げる。
そして山科先輩の目を見つめる。
『…………行ってきます……』
私の言葉に山科先輩の瞳が大きく揺れたような気がしたけど、私は頭を下げ、そしてもう一度山科先輩を見つめる。
『もしダメでもさ…。
俺は“俺の所においで”とか言わないから。
頼れる男なんていないんだからさ……先輩と和解して来いよ…?』
『………頑張ります』
それだけ言って、私は山科先輩、そして真理子さんに背を向けて走り出した。
お店の扉を開け、外に飛び出す。
右か左か、どちらに先輩が行ったか分からない……。
それでも私は何故か先輩が美術室に行くんじゃないかと思って、その方角へと走る。
言わなきゃ……!
話さなきゃ……!
ちゃんと自分の口で、先輩に伝えなきゃ……!
辺りをキョロキョロと見渡しながら、私は走る…
こんな風に全力疾走したこと、前にもあったよね……
あの時も先輩に伝えたい想いがあって走った……
息が切れて、足が縺れるのをなんとか踏ん張って、先輩がこっちにいることを願って、私は走り続けた。

