この恋、きみ色に染めたなら










『……紗希ちゃん』





背後で山科先輩が私の名前を静かに呼んだ。




私は泣いたままの顔で山科先輩に振り返る。











『紗希ちゃん……俺に嘘、つかないでよ…』






山科先輩は歪んだ顔で私を見つめ、私は唇をキュッと結んで、山科先輩の言葉を待つ。




“嘘つかないで”じゃよく分からないからー……










『紗希ちゃん、俺に言ったじゃん。

 傷ついてもいいって…どんなに泣いてもいいって、それでも成田先輩を好きでいたいって、俺に言ったじゃん。

 ならさ、先輩の言葉に泣いてないで、先輩を追いかけろよ…!


 追いかけて、ちゃんと先輩と話して来いよ……!


 俺に、隙なんか見せんなよ……』








山科先輩は唇をキュッと結び、天井を見上げる。




山科先輩の体は微かに震えていて、私はその震えを見つめながら、山科先輩が言ってくれた言葉を思い出す。








“傷ついてもいい、どんな泣いてもいい、それでも成田先輩を好きでいたい”





それは紛れもなく私が山科先輩に言った言葉で、私のこの恋の覚悟、だったはずー…














『……山科先輩………』










『傷つく覚悟も泣く覚悟もないなら、成田先輩なんてやめて俺にしな。

 その覚悟があって、先輩からどんな言葉を言われてもそれを聞ける覚悟もあるなら、今すぐ先輩を追いかけてこい……


 行かないなら…行けないなら、今すぐ俺のものにする…!』









天井を見上げいた山科先輩の顔が戻ってくると、山科先輩の目には今にも溢れだしそうな粒が溜まっていて……







それでも山科先輩は、






『俺のものになんかなんないだろ?

 だったら早く追いかけろ』





そう、私に言ってくれたー………