『それから先に言っておく。
この部屋には入らないこと。
この部屋及び美術室のものを勝手に使用しないこと。
それと俺の事を詮索しないこと。
俺のことを好きにならないこと。
それがお前を絵のモデルとして描く、必要最低限のルール、だから。
ちゃんと守れよ?』
先輩はそれだけ言うと、美術準備室から持ってきたであろうイーゼルとキャンバスを適当な広さの所まで持っていき、そこで準備を始めた。
“この部屋には入らないこと”
“この部屋及び美術室のものを勝手に使用しないこと”
“詮索しないこと”
“好きにならないこと”
頭の中で反芻してみるものの、どれも先輩に面倒がかからないこと。
そして“お前を絵のモデルとして描く、必要最低限のルール”の言葉に、何故私が描いて欲しいと懇願した訳でもないのに、こんな言われをされているのか甚だ疑問…
『あの……先輩?
別に私、モデルとかやりたくない…んですけど…』
それとなく先輩の背中にそう言葉をかけてみるも、先輩は振り向き、
『無理、もうモデルは紗希って決めてる!』
そう言い放った。
いや、私をモデルとして起用したいなら、それ相応の態度をとって頂きたいのですが!
と、心で言い返してみるも、先輩は準備に再びとりかかった。

