先輩は微動だにせず、ただこちらを見つめている様子。
どうして……
どうして、今、一番、見られたくない人に見られちゃうの……?
『………先輩………』
先輩に言わなきゃ……
私の好きな人は先輩だって……
早く……早く………
私はその一心で、その場から先輩の元へと向かおうとする。
…も、その手を比呂に引かれ、阻止された。
『…比呂、離して……!』
私が叫ぶと、比呂は歪んだ顔で私を見つめ、私の手を掴む、その力を強めた。
『本気で好きな女を他の男のところなんかに行かせてたまるかよ…!』
比呂はそう言い、私をその胸の中へと誘うー…
気が付けば、私は比呂の腕の中で、比呂にきつく抱きしめられていたー…
『……離して…!離してってば……!』
何度、比呂の胸を拳で叩いただろう……
びくともしない比呂の腕の力は強まるだけで…
『もう…離してたまるかよ……。
俺が紗希を好きなんだ、紗希をあの人のところには行かせない…!』
比呂の言葉なんて耳に入らないー…
早く、早く…先輩に………
『……最低だよ、俺は……。
お前があの人を好きだと知っても、それでもこの手を離せないんだから……。
けど…それでも俺は紗希が好きなんだ…俺のところにいてよ、紗希…』

