『……紗希があの人……。
成田先輩といるのを見かけて、俺、紗希があの人に笑いかける姿を見たり、照れたりしてる姿を見て、思ったんだよ……紗希の笑顔も照れる姿も全部、ぜんぶ俺だけに向けてほしいって……俺だけのものなんだ……って……。
確かに今更だよ……でも、俺はやっぱりお前とやり直したい……』
比呂はそう言うなり、一歩、私の方に足を動かす。
『紗希、成田先輩と付き合ってんの?』
『もうあの人とキスはした?』
どんどん比呂からの質問を浴びさせられると同時に、比呂が私に近づいてくる。
私はそんな比呂から逃れるかのように、一歩、また一歩と後退していく。
ードン
すぐ近くの壁に辿り着き、背中が壁にぶつかる音が私の耳に届く。
『紗希、あの人のこと、本気で好きなの?』
もう逃げられない…
きちんと自分の口で比呂に話せなきゃ、自分の口で先輩のことが好きだとー…
ードンッ…
比呂の右手が壁に押しあてられる。
『………す……好き、だよ……成田先輩の事……好き……』
そう答える私に比呂は顔を寄せてくる。
『紗希の片想い?それともマジで彼氏?』
『………私の片想い………』
私の返事に、比呂は口角を上げ、薄気味悪い笑みを見せる。
『なら、もう一度、俺を好きにさせればいいね、紗希……?』

