『紗希ちゃん、俺が昨日言ったこと、覚えてる?』







山科先輩は照れた顔から、真面目な顔に変わるなり、私にそ問いかけてきた。











昨日言ったこと……









『俺、紗希ちゃんのことが好きって言ったでしょ』







え………!



あれ……本気、だったの……?











『……でも私…他に好きな人…』



『知ってるよ、三年の成田先輩、でしょ?
 
 けど、紗希ちゃんの片想いみたいだから、俺、全力で紗希ちゃんにぶつかっていこうと決めたんだ。

 そしたら紗希ちゃんの気持ちが変わるかもしれないでしょ?』








てか……山科先輩……。



私が成田先輩のことを好きなのを知ってて、それでも私を好きってー…










『だから紗希ちゃん、いつ俺に落ちてくれても構わないから』




そんなことをさらりと……



…じゃ、ないー…





すっごい真剣な目で、そんなに真面目な顔をされて言われたら……





ちょっと、ちょっとくらい…ドキッとしちゃうよ……











『紗希ちゃんは成田先輩が好き。

 俺は紗希ちゃんのことが好き。

 一見、俺達の想いが交差することはないと思うかもしれないけど…

 想う恋と想われる恋、どっちが紗希ちゃんに向いてるか、どっちが紗希ちゃんを幸せに出来るか、俺が教えてあげる』







先輩は最後に、いつものようにニコッと微笑み、私の頭をポンポンと触れた。










『だから、マネージャーの件、考えといて?』





先輩はそう言って、“じゃーねー”と手を振り、そのまま階段がある方向に歩いていってしまった。











想う恋と想われる恋…




教えてあげるって……






そう言われても、私が好きなのは成田先輩だもんー…






この気持ちだけは絶対に揺らいだりしないもんー……