この恋、きみ色に染めたなら




でもそんな私の心の声が届いていない先輩はひたすら美術室までの道のりを急ぐ。



先輩の長い足、それに比べて背の低い私が何度足を回転させても、先輩の歩くスピードには追いつかない。




先輩に手を引かれていなければ、多分既に先輩を見失っていただろう。




私は自分の手を引く、その先輩の背中をただ見つめながら、必死に歩いた。












ーーガラ




少しうるさい音を立てながら、美術室のドアを先輩が開けた。







『お前、名前は?』




先輩は美術室に入るなり、私の手を離し、そう問いかけてくる。






え、今?


むしろ名前なんて初め話したときに交わすものでは…なんて思っていると、先輩は美術室のテーブルに広げられていた何枚かの絵を適当に端に寄せた。







『……1年の古里 紗希、ですけど…』




私が、そう言うと、先輩はそこにあった椅子に腰掛け、“じゃ、これからは紗希って呼ぶわ
”と言った。





へ…名前呼び?


し、しかも、氷の美男子と呼ばれている先輩に、名前の呼び捨て、ですか?







『……は、はぁ……』





私が答えると、先輩の向かいにある椅子を先輩が指差す。





“座れ”




と、目で、指で言われている、そう思って私は素直にそれに従い、その椅子に座った。