美人でも可愛げのある顔でもない、この顔?
『いいから、とりあえず美術室来いよ』
先輩はそれだけ言って、私の横を通り過ぎる。
こんな平凡な顔、何に使うっていうのよ…
私は訳も分からず、その場に立ち止まったまま、先へ先へと進んでいく先輩の背中を見つめていた。
すると、くるっと先輩が体ごと振り返り、まだ一歩踏み出せていない私を見つめた。
『とろい女…マジ面倒くせー』
先輩は口ではそう言うけれど、私のところまで歩いてきて、私の手を取り、そのまま引いて歩き出す。
『あのさ、いい加減俺が待たされるの嫌いなこと、理解してもらえる?』
……んなこと言われたって。
今日初めて話した先輩に。
しかも学校の女の子の憧れの的の人に、突然“モデルをやれ”なんて言われて。
それでこの特徴のない顔が必要だなんて言われて。
素直に足が動くとお思いですか?