にっしーはとっくに過去のことにしてるだろうけど、でも今彼女いないんだったら、もしかしたらチャンスあるかなぁ......。


「まだその先輩に未練あるの?」

「未練はないよ、早く新しい彼氏ほしいっ。
いい人がいたら、にっしー誰か紹介して」

「......どんなやつがいいの?」

「優しくて、浮気しない人がいいかな」


にっしーに彼女いないと知っても、なんとなく直球で行けず。おつまみの枝豆をつまみながら、にっしーの出方をうかがってしまう。


「......それなら、俺でよくない?
知っての通り、一人の人に尽くすタイプですよ」

「そうだね、じゃあにっしーにしとこうかな」


大学に入って、ひとなみに恋をして彼氏を作って、大人になった。大人になった分だけずるくなった。

高校生のときみたいに、傷ついてもいいやと直球でいけなくなって、駆け引きも覚えた。


相当にお酒が入り大声で騒いでいる元野球部員たちから少し離れた長テーブルの片隅で、まさかこんな話をしているとは誰も思わないだろう。

お互いに出方をうかがい、恋の駆け引きをする男女ふたり。