意を決したように顔を上げて、にっしーは私をまっすぐに見つめた。


「あみが三浦を選ぶなら仕方ないけど、俺はまだ未練ありまくりだから、もし付き合ったりしたら恨む。
......って言ったんだよ」


真剣な目で一瞬だけ私を見たあと、にっしーはすぐにうつむく。

何か言おうと思って口を開きかけたけど、にっしーの雰囲気があまりに真剣だったから、それを冗談にすることも軽く流すこともできずに口を閉じた。


......その未練があると言ったのが、ミッチーにそう言ったのが、いつの時点で言ったのか分からない。

今は何の未練もないかもしれないけど......、もし現在進行形で言ってるのだとしたら、にっしーも相当こりない。


「これ、戻しといて。
......マネージャーさん」


私が何か言う前に、視線を合わせずにテニスラケットを渡して、コートから出ていくにっしー。


野球のことしか考えないんじゃないの?
別に現在進行形とは言ってないし、現在進行形だとしても、小野くんでさえ好きな人いるし片思いは自由かもだけど......。


なんでいまさらそんなこと言ってくるのと腹立たしい気持ち半分、ぎゅっと胸がつかまれたようになって苦しい気持ち半分。

複雑な気持ちで、にっしーのしましまユニフォームの背中を見つめる。


いったいあと何回チャレンジして、あと何回すれ違って、あと何回傷つけば、私たちは前に進めるのかな。

私も、にっしーも、小野くんも、同じことの繰り返し。


いったいいつになったら、ここから抜け出せるのか、分からないよ......。