ふりむいてよキャプテン

先生用の木のノックバットとボールがいっぱい入った箱を台車に乗せて運んでいる間に、グラウンドの方はヒロくんとにっしーで数枚のフェンスが張られていた。






「おねがいします!」


準備が終わると、すぐににっしー自ら志願した百本ノックは始まった。


沈みかけている夕日を背に、先生のノックを受けるにっしーと、クールにそれを見ながらもボールを空のかごに集めているヒロくん。

彼らから少し離れた場所でノックを打つ先生に、ボール渡しをする私。


そんな私たちをチラチラ見ながら、半袖の制服に着替えた野球部員が次々と帰っていく。


「お前どこに目つけてんだ!しっかり打球みろ!
そんなんじゃいつまでたっても終わらねぇぞ!」


試合用ユニフォームから息子のお下がりだと思われるいつものピチピチTに着替えて、スポーツ用のサングラスをかけた先生のどなり声がグラウンド中に響く。


夏休みや、普段百本ノックをするときよりも、際どいとこに打たれてる気がする。

フェンスぎりぎり、右に左に散らされるボールに、にっしーは必死に食らいついていく。


「......はい!おねがいします!」


先生と同じく試合用ユニフォームから、練習用の黒いTシャツに着替えたにっしーは汗をぬぐって立ち上がる。


ちなみにこのTシャツは私も持っているけど、小野くんがキャプテンになってから新しく作られたTシャツ。

前には胸のところにワンポイントで校章が入っていて、後ろには金色の文字で"苦しみの時が最高の時"と刺繍してあるという......。

堂々とどM宣言.....じゃなくて、いい言葉が書いてある通称苦しみTだ。


まさに背中に苦しみを背負って、にっしーは何度も立ち上がる。