「あみ~」


グラウンドを出て、校舎の方に行くと昇降口近くにいる知った顔に名前を呼ばれて、手をふる。

同じクラスのまるちゃん、小野くんの......好きな人。


「まるちゃん。どうしたの?」


短いスカートに赤いスカーフ、セーラー服を着たまるちゃんは部活用のバッグを持っているから部活があったんだろうけど......。

まるちゃんの部活はバレー部で、体育館を使っているはず。こっちのグラウンド側にくるなんて、何か用事があったのかな?


「小野くんと昨日LINEしてて、学校で試合あるみたいなこと言ってたから、ちょっと寄ってみた」


その一言で一瞬固まったけど、すぐに冷静さを取り戻した。いや、取り戻したかのように平静をよそおった。


「あ......そ、そうなんだ。
試合見てくれてたんだね、ありがとう。
小野くんも喜ぶと思う」

「うん、部活あったから途中からしか見れなかったけど。遠くて、誰が誰だか分からなかったよ」

「あはは......、そうだよね。
もっと近くにきてくれたら良かったのに」


いつものように今日もキレイにマスカラが塗られた、彼女の常に笑ってるみたいな目は、本当に笑うとますます細くなる。

ほんわか笑顔のまるちゃんに、私は......ちゃんと笑えているのかなぁ。泣きそうな顔に、なってないといいけど。