「いいんだよ、ちゃんと全部食べる。
俺甘いもの好きだから、いくらでも食べられるんだ」

「......そう?にっしーがそんなに甘いもの好きだったなんて知らなかったけど、そこまで言うならもらってもらおうかな」


全く引く気のないにっしーに、私はついに根負けして、にっしーの手の中からチョコを取り返せないまま、ごみ袋の口を縛った。

にっしーは私の2つのチョコをカバンに突っ込むと、また私に近づいてきて、しばし無言でみつめあう。


「......あみ。
俺......っ、」

「な、なに......?」


今までよりいっそう真剣な目で、私の腕をつかむにっしーに、どんな反応をすればいいのか分からなくて、戸惑ってしまう。


「にっしー!まだー?」


時が止まったみたいになった二人きりの部室が、外から聞こえてきていつき先輩の声で、再び時を取り戻す。


「に、にっしー、ほら、いつき先輩呼んでるよ?
Tバッティングの途中だったんじゃない?」

「すみません!今いきます!」


何か言いたそうにしていたけど、一呼吸置いて突然パッと私の手を離し、赤い野球帽をかぶって、にっしーは外に出ていった。


にっしーが出ていき、静かになった部室で、にっしーってそんなに甘いもの好きだったかな?と一人首をかしげる。

あ、そういえば、好きですって手紙入れっぱなしだったけど......どうせにっしー知ってるしいっか。