後ろを振り向きもしないで歩く小野くんに、ついていくのがつらい......っ。小野くん足はやいから。


いや、それよりももっと大きな問題はっ。

手が......、手が......っ。


冬になりだいぶ日焼けした肌が元に戻った私とは違い、まだ真っ黒の小野くん。

その肌の違いに妙にドキドキしながら、つながれた手を凝視してしまう。


「宮崎さん」

「は、はいっ?」


つながれた手をぱっと離したかと思えば、くるりと振り返り、真剣な顔をした小野くんに思わず声がひっくり返ってしまった。





「今日の工業高校がいってた、バッター何番とか、どこに打球が飛んでるか、とかいうやつ。
あれ、今度からうちもやってほしいんだけど」


「え?あ、うん。
そうだね、それで守備位置とか変わるもんね。
わかった、今度から言うようにするね」


何を言い出すかと思えば、やっぱり予想外の小野くんに、もうなんだか色々通り越して、自分でも驚くほど妙に落ち着いた声が出た。