「......にっしー。
今日はここまででいいよ」

「え......なんで?」


その日のいつもの二人での帰り道。

本当ならにっしーが曲がる曲がり角で自転車をとめ、うつむいた顔をあげる。


「やっぱり......、ごめん。
にっしーとは付き合えない」


考えるとは言ったけど、あれから二日しかたってないけど、どれだけ考えたって結局答えはひとつしかない。

最初から、きっとそうだった。


「マサに他に好きな人がいるって分かってても?」

「うん、知ってるよ。望みがないことも知ってる。
でも、やっぱり好きだから」


ほとんどしゃべってくれないし、そっけないし、相手にもされないけど、好きなの。

付き合えるとも思ってないけど、こんなぐちゃぐちゃの気持ちのままでにっしーと付き合い続けるのは無理だ。


「そか。......うん、わかった。
なんとなく今日言われるんじゃないと思ってた」

「......ごめんね、にっしー。
ごめん......」


いつもの笑顔もなく、うつむいたまま自転車のハンドルだけを見つめるにっしーにごめんとしかもう言葉が出てこなかった。