「でもよく考えたらさ、小野くんって謎キャラじゃない?

この前も英語の授業でpeopleのこと、プロペラとか言い出したの覚えてる?
もうあれ、笑いこらえるのに必死だったよ」



そういえば......、この前、英語の授業で小野くんが当たった時、プロペラとか言ってたな。

どうがんばったって、peopleをプロペラって読めないのに。むしろものすごいがんばって読まないと、プロペラって読めないよね。

しかも、自信ないなーって感じの読み方だったらまだ分かるけど、真顔で、だ。


イジラレキャラの人だったら、それで教室がわくんだろうけど、小野くんってあんまりしゃべんないし。

で、教室が微妙な雰囲気になったのを覚えている。



「たしかに。うん、小野くんって変だ。
キャッチャーフライとれなくて、三日でキャッチャーやめるし」



うんうん、と頷き合っていると、お前ら席つけー、と担任の声。


ほんとに、小野くんって硬派キャラなのか、笑いをとりたいのか全然分からない。

謎キャラだし、なんで少しでもいいと思っちゃったのか分からない。


でも、さ、全くしゃべんない小野くんとまるちゃんが隣同士に座っているのを見て、なんとなくモヤモヤしてしまう。

ああもう、小野くん以上に私も謎キャラだ。


モヤモヤが消えないまま、複雑トライアングルの一角、小野くんの後ろの席に、そっと腰を下ろした。