4月。
入社3年目で、私は新入社員の沖田くんの教育係になった。一通り新人研修が終わると、後はコンビを組むことになる。北原さんとのコンビも解消だ。

「何だか寂しいですねぇ。」

「ま、それだけ認められてる、ってことだろ。『姫が食べ尽くします!』も好評だしなぁ。」
北原さんがニヤニヤと笑いながら言う。

私は、ぐっと眉間に皺を寄せながら「…ご冗談を…」と言葉を返す。


『姫が食べ尽くします!』とは、タウン羽浦に掲載されているコーナーで、大盛りがウリのお店に私が行って完食に挑戦するという内容だ。この企画が持ち上がった時、卒倒しそうなくらい動揺したものの、雇われている会社員の悲しい身の上、拒否します!…という選択ができなかった私。


半年ほど経って、雑誌に載ること自体には抵抗は薄れつつあったけど、この恥ずかしすぎるコーナー名だけは、正直勘弁して欲しいと思っていた。


新人の沖田くんは…まぁ、何と言うか、さとり世代ってヤツ?で、仕事に対する意欲が無く、教えられたことだけしかやらない。

私は意欲的でガツガツ仕事に向かうタイプなので、彼と仕事をしていても張りがなかった。それだけならいいけど…