キミがこの手を取ってくれるなら


「今日は小山くんを借りてしまってごめんなさいね。もう一人スタッフがいるんだけど、お子さんが急に具合が悪くなったって連絡が来て…帰ってもらったの。」と彼女は申し訳なさそうに謝った。

「あと一時間くらいで閉店だから、あちらでゆっくりしていってね。」と、カウンターから右側に向かって進むと、奥の方に案内してくれた。


「MilkyWay」の店内にはイートインのカフェスペースがあった。そこはカウンターとテーブル席が5席だけのこじんまりとした作りだったが、大きな窓があり、落ち着いた雰囲気を感じさせる場所だった。


奏ちゃんはここでウェイターをしていて、手が足りなかったらパンの販売のほうも手伝っているらしい。

閉店が迫っているのであまり種類はなかったけど、どのパンも美味しそうだった。
さすがに今の時間から4つも5つもパンを食べる訳にはいかない。夕飯が入らなくなっちゃうから1つだけ…なんて小学生みたいだな、と思いながらも、結局迷いに迷って2つのパンを選ぶ…ことにしたけど、あぁ決められない!


ブルーベリーとチーズが乗ったデニッシュパン、シンプルなクリームパン、あめ色のリンゴ煮がぐるぐると入ったシナモンロール。

やっと3つに絞りこんだものの、決めかねて3つのパンの前でうんうん唸っている私を見かねて「ひと通り食えばいいだろが。」とじゅんたがクリームパンを引き取ってくれた。


わりと遅い時間なのに、テーブル席は埋まっていて、カウンターに二人で並んで腰掛ける。
ふと奏ちゃんを見ると、テーブル席に座っている2人組の女の子達に話しかけられていた。


ムッとしていると、目の前のカウンターの中にいたお兄さんがくすくすと笑いながら「ご注文をどうぞ。」と声をかけてくれた。