王様とうさぎさん

 



 莉王は奥の部屋に允を通すと、
「ちょっと着替えて、コンタクトを入れてきます」
と言って消えた。

 服とコンタクトを入れたガーゼのハンカチを手に、テレビのある部屋との境を閉める。

 ワンルームの莉王の部屋は狭いが、不思議と落ち着いた。

 そこ此処に莉王の匂いがすると言うか。

 ぼうっと立っているのも妙なので、壁際に腰を下ろす。

「テレビでもつけててください。
 時計もないし」

 いや、社会人としてそれはどうだ、と思いながら、自分の腕時計で確認する。

 まだ、大丈夫そうだ。

「あっ、化粧品〜っ」
と叫ぶ莉王の声が聞こえた。

 洗面所のドアが開き、ひょいと仕切りのアコーディオンカーテンも開けて莉王が出て来た。

 あ、と思った。

 本人は気づいていないようだ。