王様とうさぎさん

 


 目の前で、形のいい莉王の脚が軽快に階段を上っていく。

 霊が出たと言って、朝はぼんやりしていたが、段々目が覚めてきたようだ、と允は思った。

 少し古いが、小洒落た造りのアパートだ。

 如何にも女性が好みそうな造りだが、莉王に聞いたところに寄ると、男性の住人も居ると言う。

「物騒じゃないのか」
と言うと、

「いやあの、貴方のマンションにも女性が居ると思うんですが。

 貴方が住んでるだけで、そこはその女性にとって、物騒な場所になるんですか?

 過保護な親みたいですね」
と言い出す。

 確かに。
 だが、莉王を見ていると、なんだか危なっかしくて、ついつい口を挟みたくなるのだ。

 莉王は自分をうさぎさんと言ったりするが、莉王の方がうさぎのようだ、と思っていた。

 白くてふわふわしていて、ちょっと落ち着きがない。

 ふと、それとは対照的な少女が頭に浮かんだ。

「黒部清香の親も過保護だったな」

 ふいに口にした言葉に、莉王は足を止めかける。