王様とうさぎさん

 お手洗いに立った允に、
「すぐ出来るからねー」
と彼女は言った。

「あのー」
と呼びかけると、こちらを向く。

「あの、うさぎ……卯崎さんって、いつもこうやって、女性を連れてくるんですか?」

 そう訊くと、

「いや、初めて」
と言う。

「今、すごく軽く話を流したから、よくあることなのかと」
と言うと、

「こういうのは初めてだけど、あの人変わってるから。

 ああ、うち、允さんとこの檀家で、小さい頃からよく知ってるから。

 万田椿(まんだ つばき)です」
と女性は名乗った。

「は、初めまして。
 天野莉王です」

「莉王ちゃんか。
 可愛い名前ね」
と椿は笑う。

 少し年上かな、という感じだった。

 まあ、話し方が落ち着いているだけなのかもしれないが。