王様とうさぎさん

 


 店内は混んでいたが、座れないほどではなく、店の隅の狭いテーブルに通された。

 作務衣に絣のエプロンを着けた茶髪の女性が、熱いお茶を持ってきながら言う。

「允さん、すみませんねー。
 こんなところで。

 いっそ、中の方がいい?」
と厨房奥を指差した。

 小柄で顔が小さく、目も細いが、なんとなく可愛らしい女性だった。

「いや、此処でいい。
 無理を言ってすまん」

 いやいや、と彼女は手を振る。

「ところで、この人、彼女?」

「いや、ちょっと結婚しようかと思ってるんだが、今、断られている」

 平然とした顔で允は言った。

 うさぎさん、結婚って、ちょっとするものでしたっけ?
と思いながら見たのだが、女の方は、そんな允の言動に慣れているのか。

「そうなんだー」
と軽く流している。