王様とうさぎさん

「うまい蕎麦の店があるんだ」

 蕎麦!?

「こう平たい大きなザルにいい色の蕎麦が薄く広げてあって、自分でわさびを擦る——」

 そこまで言って、莉王を見る。

「行くか?」

 食いついたのを見てとられたようだった。

 うう。
 しまった……。

 窺うように見、
「私が蕎麦好きなの、知ってました?」
と問うと、いや、と言う。

「だがまあ、調べもせずに意見が合うというのは、相性がいいということだな」

 いや、食べ物の好みが合うからと言って、相性がいいとは限らないんだが、と思いながらも、なんとなく、釣られて一緒に歩き出す。

「冷酒によく合うんだよ」

「その一言はいりませんよ。
 仕事中は呑めないのに〜」

「じゃあ、今度、休みの日に本店の方に連れてってやろう」

「えっ」

「今度の日曜に」

「危うく引っかかるとこでした」
と言うと、允は笑う。