「結納も婚約の儀もまだですので、
一応、略式ではございますが、
輿入れは輿入れと。」
と綾小路家の当主が言う。
「準備も間に合わず、
申し訳ない。
てっきり、夜に来られるものと。」
とお祖父様は、平謝りをした。
「本当に、必要なものを
お持ちしただけですから。
祝言もありませんので、
出来るだけ早くと思いましたら、
このような時間になり、
こちらこそ申し訳ありません。」
綾小路家の両親は
頭を下げた。
そうだよ。
まだ8時前だよ?
僕は、イライラして、
頭を掻いた。
「いやはや、
では、本番の時には、
きちんと準備いたしますので、
な、な、お前も袴を着てだな。
仲人も立てて。
ちゃんと餅つきでお迎えして、な。」
祖父は、
スウェット姿の僕にすがる。
いい加減にして欲しい。
「僕は、そんなの知らないよ〜!」
と嘆いてはみたものの、
誰も僕の言葉を
聞いてはくれなかった。

