それから、
三つ指を立て、
背筋を伸ばしたまま、
美しいお辞儀をした。

その所作の美しさったら
なかった。

息を飲んで、
その一連の動作を見守った。

「ふつつか者ではございますが、
この桜子、理太さまに
一生ついていきたく存じ上げます。」

彼女はそう言った。


「…。

は?何を言ってんの?

てか、頭あげて!」

僕は、おろおろと立ち上がった。


「理太さまに相応しい妻になれますよう
誠心誠意努力いたします!

お嫌であるのは承知いたしましたが、
一度で構いません。
機会をお与えいただけませんか?」

彼女は、震えてはいたが、
しっかりした声で、
そう言った。