…。



パチ。


パチ、パチ、パチ。


手を叩く音が聞こえて、
頭を上げると、
彼女が、
めいっぱい拍手をしていた。


「…。」

訳が分からず、
その様子を僕は見ていた。


「理太さまは、
思ったとおりの素晴らしい方です!」

そう、彼女はうっとりしたように
僕を見つめた。

「へ?」

「ご子息であるからと
その立場を当たり前だとは甘んじることなく、
尚且つ冷静に分析なされ、
ご自分のお家だけにとどまらず、
日本の経済界のために
そのお役目をどう果たすべきか、
広い視野で、また思慮深く
模索されております。

私、感動のため、
ついつい聞き入ってしまいました。」

「や、ただの愚痴しか言って…」

今度は、彼女の興奮が
収まらないようで、
その目は生き生きと輝いていた。


「理太さまは、
社員一人一人の懸命で堅実な姿勢を
重んじられる
素晴らしい指導者になれると
私、確信いたしました。」

「え?話聞いてた?
僕は…一言も…」


「理太さま!!」

「はいっっ!!」

思わず僕は、
シャキッと返事をした。

すると、
彼女は、敷いていた座布団から
一段下がり、
その座布団を外した。

姿勢を正し、
目を閉じて、
ゆっくり深呼吸をした。