メガネ殿とお嫁さま

僕は頭をかいた。

それから、立ち上がり、
へとへとのお祖父様の肩を抱き、
席へと座らせた。

「血圧あがりますよ。」
と言いたいが、
余計怒鳴るから言わない。

祖父は、水を一口、
飲んでから話し始めた。

「のぅ。
わしわな、お前が心配なんじゃ。

公立の学校に行かせたのは、
なよなよした金持ち坊ちゃんに
なって欲しくはなかったからじゃ。

お前は、確かに、庶民の暮らしを理解し、
堅実な人間では、あると思う。」

意外だな。
そんな風に
思ってたのか。

「しかし、熱と根性と誇りがない。

この世界を少なからず、
引っ張っていく人間に、
お前はならねばならない。

お前の父は、
武家という名前だけの形は
馬鹿にしているが、
その本質はきちんと理解している。」

そうなの?

僕は、少し父を思い出す。
寡黙で仕事バカなところしか
思い出せない。

「お前は、この日野原家の次期当主なんじゃぞ。」

いやいや、好きで、
この家に生まれてきたわけじゃないから。

「頼む。
お前には、
いや、
この日野原家には、
きっと彼女の力が
必要なんじゃ。」

お祖父様が、
ゆっくり、頭を下げた。


僕はそんな祖父を初めて見た。