「わ!わたくし!は!
日野原 桜子で!こざいますっ。


ひゃ、ひゃくごじゅう年後の
みなさま、
お元気でいらっしゃいますでしょうか。

ひ、ひとーつ、
ぶっ…武家の女子たるもの…


え。これはよろしいんですか。


は、はい。
申し訳ございません!
も、もう一度お願いします!」



可愛らしい黒髪の女の子が
頭を下げる。
先ほど、別のデータで、
日野原と抱き合っていた女の子だ。



「えーと、その…


り、理太さまのことが
大好きです!!」



彼女は、日野原 桜子。
旧姓、綾小路。


武士と呼ばれた日野原 理太の妻。


彼女の公式な記録は
彼の影に隠れてほとんどない。

他のメンバーのように
公式な表舞台に立った様子もなく、
日記などは、
日野原家に受け継がれているが、
門外不出とされている。

また
綾小路家は、
年の離れた弟が継いでいて、
彼は民俗学の研究者となった。
しかし、綾小路家の資料自体
非常に少ない上に、
桜子の史実は特に少ない。



ただ、
彼のピンチを
何度も救ったのが
彼女であることは、
誰も知らないが
本当のことだ。





僕は、
それでだけ、レポートに打って、
データを閉じた。