「二人で、
二つの家を守っていくんじゃ。

いつか、この世界が、
終わる日が来ても、
日野原家と綾小路家は、
その最後を見届ける義務があるんじゃ。

もうお前には、分かるじゃろう。

この家とわしらの家には、
使命があるんじゃよ。

形だけでも残そうとした、
誰かの気持ちを
よく考えるんじゃ。」

お祖父様は、
そう僕らに言った。

「そう、あなたたちにしか
出来ないことが
必ずあるのよ。

しっかり頑張りなさい。」

とお母様が言った。

僕らは、深くお辞儀をした。


「桜子さん、
武家の女子たるもの、
夫に死んでもついていきなさい。」

と桜子さんのお母様が言い、
守り刀を渡した。


桜子さんは、それを受け取り、
自分の着物の懐へと指した。


「ふつつか者ではございますが、
この桜子、理太さまに
一生ついていきたく存じます!」


その言葉は、
あの日と全く同じなのに、
僕には古臭い形だけの言葉には、
聞こえなかった。


「愛してるから、
一生私を離さないで!」

と彼女が言ったように
聞こえたんだ。


それは、男子に服従する
大人しい女の子じゃなくて、
冒険にダイブする
逞しい女の子の言葉なんだ。