「だから言っただろう。
形だけの家にこだわりはない。と。


大体実力がないやつに、
日野原財閥を譲る気もない。

社員に認められて初めて、
候補の一人になるんだ。

それは、他人よりも努力と運が必要だ。
他人よりも大きな支えと力が必要だ。

彼女しかいないんだろう?」


お父様がそう言った。

あれから、また大人たちが
帰ってきて、
扉が開き、
その時の体制やら、着衣の乱れやら、
見合いの席で前代未聞だと
散々叱られた。

だけど、
僕と彼女はもう大丈夫。



「はい。
彼女となら。」


僕は答えた。



「私どもも、
娘を貴方以上に愛してくださる方は
いないと昨夜で確認させていただいた。

私どもは、それが一番の望みです。
家の名に未練はありません。」

と桜子さんのお父様が
頭を下げた。

き、昨日、
すごく怖かったのに。