メガネ殿とお嫁さま


羽みたいに軽い布が、
いくつも重なり合って、
美しいドレープを写している。


「うまく言えないね。
岩ちゃん。」

僕は、目頭が熱くなるのを感じた。


「僕ね、しばらくパリに行くことになったのね。
これは、日本で最後のドレス。」

岩ちゃんは、ドレスの裾を
直しながら言った。

「そっか。」

「僕には期限があるから、
今しか服作りはできない。

なんかね。
諦めるのは勇気はいるけど
簡単なんだよ。

ただ、それを取り戻したくても
二度と戻らないしむつかしい。」

岩ちゃんは、
時々大人みたいな顔をする。


「僕らは、
せつないんだよ。

自分が一番どうにもならない。」

岩ちゃんの言葉は、
僕を納得させた。



僕は、
彼女にこんなドレスを
着せてあげられないことを
辛い、とはっきり思った。