メガネ殿とお嫁さま


カヨさんも
山下さんも、
彼女のことも
なぜ彼女が突然いなくなったかも
話題にしない。

僕は、カヨさんの手伝いをするようになったし、
山下さんが運転する車を
洗ったり、
家のことも進んでするようになった。


「ここでいいよ。」


校門の前で降りるのも
もう当たり前で、
並木道を歩いて、
中庭を抜けて行く。

もちろん、もうエントランスの行列は、
消滅した。

僕がやめてほしいと
お願いしたのだ。


驚くほど、あっさり、
皆は僕のお願いを聞いてくれた。


だけど、僕は、このフェンスを越える。

彼女とたった一度だけ歩いた道。


それは、キラキラと今も輝いていて、
僕の足を支え、
背中を押してくれる。


僕は、テラスで
手をつなぐ、かつての僕らを
後ろから見つめた。