なのに、
詩子さんは、

それを見て、



「…ありがとう。

ちゃんと言ってくれてっ

あっ…ありがとっ…。」


と泣き崩れた。


僕は、見ているしかできなかった。

僕がいかに
恋愛を分かっていないかを
目の当たりにした。

さっきの泣き方と全然違う。

きっと、
あの土下座で、
詩子さんはぎりぎり救われたんだと思う。

行為をしたことを謝ったら、
彼女に失礼だからだ。

そして、シュウくんは、
封筒を詩子さんから、
受け取り、
翠さんに渡した。


「恥ずかしい真似をするんじゃない。」

そう言って、
翠さんの頬を叩いた。


「…なんで!
なんで私が叩かれるのよ!
親も叩いたことないのに。

私は被害者よ。」

翠さんがブワッと泣き出した。


「加害者は、俺だ。
憎むなら俺にしろ。」

シュウくんはそう言って、
翠さんの腕を掴んで立ち上がらせた。


「部屋見つかるまで、
ここにいたらいい。

俺は戻らないから。

あと、悪いけど頼むわ。理太。」


そう言って、
翠さんを連れて、
出て行ってしまった。