自分の部屋の扉を閉め、そのままベッドへダイブ。
勢い付けすぎたせいか、ベッドの向かいの壁に頭をぶつけた。
痛い、と叫ぶ気力も今の私には持ち合わせておらず、自分の掌で頭を撫でた。

「…ソロ…一人で…しかも与永が出ているはずの試合で…」

その時、タイミングが良いのか悪いのか、甲高い効果音を私のケータイが奏でた。
電話だ。
着信相手は『与永』と書かれていた。
もちろん、取りません。スルーします。

2分…3分…5分…10分と、着信は鳴り続けた。
さすがに頭にきた私は降参し、電話をとった。

「何」

『お、出たし。寝てた?』

電話の受話器から、あの憎たらしい声が聞こえる。
寝てた?寝たいわ。お前がずっと電話してくるからだろ。
寝てても起きるわ。

「で、何」

『吹奏楽部出るんだってな、俺らの試合に。しかも俺レギュラーだし』

自慢げに声を弾ませた与永。
ふふ、私はソロデビューだぞ。このやろう。
女の子がそんな言葉遣いしてはいけないと分かっているが、仕方が無いのだ。
私はか弱い守ってオーラ出してる可愛い子ちゃんなんかじゃない。
どこにでもいる一般ピーポーなのだ。
その中でも断トツで凡人の極みと言っても過言じゃないほどの凡人少女なのだ、私は。
そんなことより、こいつは私のソロの事を知っているのだろうか。
まぁ、教える気も無いが。

『とりあえず、頑張れよ〜。あ、でもお前の音聞いたらシュート外しそう』

「よし、ガンガン音鳴らすから覚悟しとけ。そして全校生徒の前で大恥でもかいておけ。」

『はいはい。じゃあな、また明日』

欠伸混じりのセリフにより、私は時
計に目を向けた。

21時54分。

今考えれば宿題すらやっていない。
それどころか着替えてもない。

私は走る様に自分の部屋から出ていった。