「お母さん、クラスの子に体操服借りたから洗ってほしい!明日返そうと思うんだけど…」
「やっぱり。部屋に体操服入れた袋だけポツンとあるから変だと思ったのよ〜」
家に帰るなり、お母さんにため息をつかれる。
「男の子が貸してくれたんだ」
中島くんっていう、意地悪な男の子だよ。
っていうのは、言わないけどね。
「あんた、幼稚園の頃も体操服忘れてたわよね〜。その時も男の子が貸してくれたわよ」
え、そうなんだ?
昔からそんな子だったの?
「カバンに入れなさいよって言うと、もう入れた!って元気に言うから幼稚園に送っていたのよ」
そうしたらお迎えに来たお母さんに私が
『体操服がね…なかったの…。でもねっ、やまとくんが貸してくれた!』
そう言ったんだって。
全然記憶にないや。
やまとくん、優しかったんだね。
そんなやまとくんは、体操服がないから端っこで体操座りをしていたんだって。
小さい時は部活なんてないからできなかったんだ。
その時は授業というよりお外遊び。
きっとお外遊びしたかったよね…。
「やまとくん、今何してるのかなあ」
優しかったやまとくんは、どこにいるんだろう。
どこの高校なんだろ?
優しいままなのかな?
「さあねえ…。小学校別々になってから連絡とってないからね。ってほら、早く体操服出しなさい!」
背中をグイグイと押されて私はリビングから追い出される。
やまとくん、元気だといいなあ。
クラスの『やまと』くんは少し口が悪いです。
よくバカにされます。
それでも、やまとくんと同じように体操服を貸してくれました。
ありがとう、中島くん。

