「不思議ねえ。もしかしたら本当に郁の小さい頃のことを知ってるのかもね?」
もう、お母さんまでそんなこと〜。
…でも、一回だけ、もしかしたらって思ったことはある。
体育会の時。
あの言葉は私が幼稚園の時に好きだったやまとくんに向けた言葉。
あの時は中島くんはやまとくんなのかな?って思った。
だけど、名字が違うしやまとくんは意地悪なんて言わないもん。
それでも…あれから、ちょっとだけ似てるんじゃないかなって。
違うのはわかってるのに、中島くんがやまとくんに似てるような気がしてしまう。
ううん…多分、私がやまとくんに向けた言葉と同じ言葉を言ったからそう見えるんだよね…。
「もーわかんないっ!知らないっ!絶対にやまとくんじゃないもん!」
最後の一口を勢い良く口に入れて、食器を台所に持って行く。
よく考えてみる。
あんな意地悪ばっかり、やまとくんは言わないもん!
中島くんは優しいかもしれないけど、遠回しすぎるの。
やまとくんはもっと直球で、ちゃんと正面からの優しさがあったもん。
違う違う!
「…やまとくん?郁、教えてくれてる子の名前は何?」
「ん?中島大和くんだよ?」
リビングのドアを少し開けた時、お母さんが何か考えながら聞いてくる。
私はそれに首をかしげて答える。
名前聞いてもわかんないと思うけどなあ。
名前を言うとテーブルに頬杖をついてまた何か考え出した。
お母さん、変なの。
そう思いながらリビングをあとにして、部屋に行く。
「よしっ!勉強だ」
意気込んで、カバンからさっき中島くんとやった数1のワークを取り出す。
やらないと忘れちゃうからね!
ここの問題解いたら違う教科もやらなくちゃ!
ペラペラとワークをめくる。
「あ……」
ポツリとそんな声がもれた。
やっぱりきみは私には掴めない。
口は悪いのにたまに優しさを見せてくる。
そんなきみに、たまにドキドキしちゃうんだ。
嫌にならないのは、そんなところがあるから。
ほら、こうやってワークの端っこに
『Fight‼︎』
なんて書いてたりするところ。

