「……できたっ!」
そう思うと不思議と集中できて、何とか答えを出せた。
窓の方からワークに目を移した中島くんはしばらく答えと照らし合わせる。
少しだけ口角をあげて、ふうっとため息をついた。
「できんじゃん」
そう言いながら赤ペンで大きな丸をつけてくれた。
やったあ!!!
苦手な数1の問題が解けた!
って言っても一問だけなんだけどね。
「これで花マルも夢じゃないな?」
あ…。
覚えててくれたんだ。
言わなかったけど、私はしっかり覚えてたんだ。
『じゃー俺がいい点取ったら花マルしてやるよ。これ、約束な』
動物園に行った帰り道、指切りをして約束したんだ。
「うん!絶対に中島くんに花マルもらうんだ」
頑張るとご褒美がもらえる。
花マルなんて子どもっぽいかもしれないけど、ちゃんと約束だもん。
「頑張れ、郁ちゃん」
フワッと笑う中島くんがワークを私の方に返す。
他の人にはしないような笑顔。
きっと、こんな顔を他の人は見たいんだろうなあ。
「郁ちゃんなんて呼びなれてないくせに」
照れ隠しに少しだけ意地悪をしてみる。
いつもの仕返しだよ。
「呼んでたよ、昔は。いつも、何回もな」
なのにまた不思議なことを言う。
昔?いつも?何回も?
中島くんの言ってることは、やっぱりよくわからなくて。
眉毛を下げてみると、ははっと笑う。
やっぱり中島くんの意地悪には叶わないや。

