しばらく歩くとキツネがいる檻にたどり着いた。
檻の前に設置されてる木製のベンチに座って、じゃれ合う2匹のキツネを見る。
あの時もこうやって見てたな…。
このベンチに座って2人で。
「やまとくんも覚えてるかなあ…」
「やまと?」
思わず声に出してしまった名前に中島くんが反応した。
そうだ、中島くんも「やまと」って名前だっけ。
「幼稚園の時の親子遠足でね、やまとくんっていう男の子とキツネ見てたんだ。今みたいにここでね」
ふーん、とズボンのポケットに手をつっこむ。
「その、『やまと』って奴のこと好きだったり?」
好き……。
しばらく考えてみる。
「昔は好きだったよ。でも小学校が別々だから、もうそういう気持ちはなくなっちゃったなあ」
好きっていう気持ちはすごく前のもので、今はって言われると違う。
「ソイツ、俺だったりしてな」
ははっと笑って立ち上がり、檻の方へと近づき、しゃがんだ。
膝に腕を置いてその上に顔を乗せる。
「……それはないよ。だって、幼稚園のやまとくんと苗字が違うもん。中島くんはやまとくんじゃないよ」
中島くんの隣に同じようにしてしゃがむ。

