「こんなに暑いのに……」
どうして動物園を選んだのかはわからないけど、学校の近くにある動物園へ。
影なんて全然なくて、汗がポタリと流れ落ちる。
「なっつかしー…」
本当にこんなのが体操服のお礼になるのかな。
でも中島くんが来たいって言ってたし…。
「何見たい?女の子はペンギンとかコアラとかいうわけ?」
「もう。可愛い動物言ってかわい子ぶるなって言いたいんでしょ」
中島くんの言いたいことなんて、わかっちゃうんだから。
別に何見たいって言ったって勝手じゃん。
「今日はお礼のためだから、中島くんの見たい動物でいいよ」
本当は………
「じゃあキツネでも見に行こうか」
変なの。
おんなじ気持ちだ。
本当はキツネが見たいなって思ってた。
幼稚園の親子遠足で、お母さんとここの動物園に来た。
その時にやまとくんも一緒にキツネをずーっと見てたんだ。
他の動物なんて見ずにずっとキツネだけ。
お母さんたちを放って2人でお喋りして。
「見たいっしょ?キツネ」
「うわっ!」
ぼふっと頭に何かをかぶせられたかと思うと、それは帽子だった。
黒色のベースボールキャップ。
前が見えないくらい深く被せられた帽子を慌てて上にあげると、中島くんは1人でスタスタと歩いていた。
なんで私がキツネを見たいって思ってたのがわかったのかなあ。
もしかして声に出ちゃってた?
「とろい、早くしろ」
ぼーっと背中を眺めていると、振り返って舌を出す。
とろいって……。
これ以上待たせると次は何言われるかわからないから走って中島くんの元に行く。

