そして約束の放課後。
ホームルームが終わって皆がぞろぞろと教室を出る中、私はゆっくりと用意をする。
『何かあったら報告してね!』
なんて陽菜ちゃんは言ってたけど、何もないと思うなあ。
多分、また意地悪言われるだけだと思うけど…。
そして、教室には私と中島くんだけが残った。
「おい、バカ」
……名前で呼んでくれないかな?
バカって名前じゃないんだから。
私は反応せず帰る準備を進める。
「おーい」
無視無視。
「おい」
名前を呼ぶか、ごめんって謝るかどっちかしないと私は反応しないよ?
そりゃあ、お礼がしたくてここにいるんだけど、それとこれは別だよね?
「郁ちゃん」
ドキッとした。
真後ろでそう呼ばれたから筆箱を落としてしまった。
「どーした?」
俺は何もしてないって言うみたいに聞いてくる。
どーした?じゃないよ!
中島くんのせいだから!
「な、何もないっ!」
筆箱を拾ってカバンに入れる。
急に下の名前を呼ばれたっていうのもあるけど、それだけじゃない。
だってその呼び方……
「幼稚園の頃呼ばれてたから?」
どうして……。
振り返ると、首をかたむける中島くんがいた。
眉毛をピクッと上にあげて、合ってる?とでも言いたげな顔をする。
なんで…知ってるの…?
「どうして…」
「……だから昔のことは知ってるっつってんだろーが」
バーカ、とチョップをしてきた。
ほらまた、不思議なこと。
なんでわかってしまうんだろう。
本当に私の昔のことを知ってるの?
それともやっぱりバカにしてるだけ?
今のはたまたま当たっただけ…なのかな。
「お礼って…何してくれんの?」
………あ、そうだった。
「あの、何でも言って!内容は中島くんに任せる…!」
って陽菜ちゃんが言えって。
すると、うーんと考え込む。
「じゃあさ、動物園行こう」
………………動物園?

